屋形船の想い出  音楽療法のひとこま

最近、高齢者のデイサービスにも男性の利用者が増えてきています。

ただ、やはり女性が圧倒的に多いので、男性の方は少し肩身が狭い様子。

それでなくても男性ってそういう集まりに行くのって苦手じゃないですか・・・

 

だから、私は男性の方には特別に気を使い、楽しんでもらえるように考えます。

 

Sさん、70代と思われます。

建設業をされていて、東京タワーを作る現場にいました。

そのことを誇らしく思っています。

また、若いころ、ニニロッソが好きで、トランペットを吹いていたそう。

実はとてもダンディな方だったのじゃないかな、と思います。

でも、何らかの理由で、デイサービスを利用しているのです。

 

この日もSさんの楽しい話を聞くことができました。

《東京音頭》で太鼓を叩き、気分も高揚してきたとき、

この歌詞を見てひと言、「屋形船か」

私が「Sさん、屋形船に乗ったことあるんですか?」と聞くと

「言問橋と吾妻橋の間を行ったり来たりするんだ。

川の両側が桜並木なんだよね。

麹町の芸者を呼んでさ、一杯やるんだよ。」と一気に話しました。

「すごいですね~芸者さんって呼ぶと高いんでしょ?」

「いや~、俺が払ったわけじゃないもん。接待だよ。」

 

当時は建設業は羽振りが良かったのかもしれませんね。

 

回想法という手法があります。

いろいろなことを回想して、その方の人生はいい人生だった、ということを導きます。

昔を懐かしむのはけっして後ろ向きなことではないのです。

 

男性のかたは女性以上にプライドを持っています。

デイサービスでの普段の生活では現れないようなことも

音楽をとおすと出てくることがよくあります。

今回もSさんのそんな一面を知ることができました。

 

音楽の要素には美的感覚というものがあります。

音楽療法をとおして、たくさんのいい思い出を引きだしたい、と思っています。