ハーモニカで伴奏を・・音楽療法でのひとこま

グループホームに最近入居されたKさん。男性です。

80代と思われますが背がスラッとしていて足が丈夫な様子。

いつも明るくホームの隅から隅までを歩いています。(徘徊ともいう)

 

音楽療法で席に着き、ホワイトボードの「青い山脈」の歌詞を見ると

「懐かしいなあ」とひとこと。

そして、内ポケットからハーモニカを取り出し、吹き始めます。

2段になっている本格的なハーモニカです。

リズムも軽快で音の間違いはほとんどありません。

 

私が「伴奏をお願いします」と言うと照れながらも

正調のAmで前奏が始まります。(以前に吹いていたのでしょうね)

あの有名な旋律の前奏で参加者の皆さんが声をそろえて歌います。

私もピアノで伴奏に加わります。

 

歌い終わると参加者の女性が「すばらしい」「すごい」などと尊敬のまなざしとお言葉。

 

そして他の歌詞を貼るとKさんはまた「懐かしいなあ」と言います。

でもハーモニカも吹きませんし歌も歌いません。

楽しそうに聞いています。

 

変ですねぇ。

なにか訳があるのでしょうか。

それとも・・・

 

1時間の音楽療法が終わりに近づきました。

やっぱりもう一度Kさんにハーモニカを吹いてもらいたいと思いました。

村田英雄の「人生劇場」をお願いしました。

「吹けるかなあ」と心配そうにしているので

最初の音は「ド」ですよ、とアドバイスすると、やがて吹き始めました。

Amが一番吹きやすいかな、と思ったのです。

「では最初から」

皆さん大きな声で歌います。

 

Kさんは楽譜はなくても、自分の勘で吹いているようです。

いつもいつもいろいろな曲を吹いていたのでしょうね。

 

最後の曲は「上を向いて歩こう」です。

私はこの曲は有名だし、Kさんは絶対知っているから、吹けるだろうと思いました。

最初の音だけ教えてあげるとやはりスラスラと吹きます。

 

ハーモニカの伴奏だけで楽しい「上を向いて歩こう」になりました。

 

最後にKさんに皆さんからの暖かい拍手。

Kさんはとても嬉しそうでした。

「ハーモニカは肺にいいんだ」なんて言ったりして(*^_^*)

 

1時間吹き続けるのは大変でしょうが、これくらいなら毎回お願いできそうです。

ハーモニカ音楽療法でKさんにいい変化があるといいなあ、と思いました。

 

徘徊や、落ち着きなく頻繁にトイレに行く、などの行動をされる高齢者の方は多くいます。

音楽療法の1時間はたいがいの方はじっと座って参加できます。

心の安定や集中という効果があるのです。