「選択する」という手法とステキな答えが返ってくる魔法の質問

有料老人ホームのスマイルミュージックでのこと。

 

今日のテーマは「花祭り」。


いろいろな色の花の歌を歌いました。


その中の1曲に『四季の歌』がありました。

この歌はみんな大好き。たった2文で春、夏、秋、冬の雰囲気を表している、ステキな曲です。

 

歌い終わると参加者の皆さんに「みなさんは春夏秋冬のどの季節が好きですか?」と問いかけました。


この「選択する」という手法を私はよく使います。

質問するとき、ただ漠然と「○○をどう思いますか?」ときいてもなかなか答えは返ってはきません。

でも、「この中から選んでください」と言えば、答えやすいです。


当然、選択する事柄が多くなるほど「選択する」ことは難しくなってきます。

今回は4つの中から1つを選ぶというもの。ちょっと難易度高いですね。


参加者 ひとりひとりに 聞いていきます。

認知が重くなればなるほど「選択する」ことができなくなってきます。

そんな時は、にっこり笑って「どれもいいですよね」「なかなか決められませんよね」と言いましょう。


そして、今回の質問には「選択する」の他に、「好きな理由を話す」という漠然とした難しい質問を重ねて聞きました。


みなさん、それぞれ自分の言葉でお話しされましたが、

なかでも、とてもステキだった2人の方のお話を紹介します。

どちらも80代女性です。

 


 

一人目の方はAさん、

普段はとても物静かで話しかけても弱々しい。

音楽の時間、目をつぶり「寝ているのかな?」と思うときがあります。

 

でも今回は違いました。

好きな季節を聞くとすぐに「春」と答えました。

理由はなんですか?と聞くと、微笑みながら目を輝かせ一気に話し始めました。

 

「私は新潟の生まれです」

「春になると、小川が流れてね、積もった雪にトンネルができるんです。」

「そのトンネルの中をのぞくと土の中からふきのとうが顔を出しているんです」

 

その方の目には雪から顔をのぞかせた、ふきのとうがしっかりと見えているようでした。

 

聞いている私にもAさんの感動が伝わってきました。

もう一人の方は、Bさん。

認知があります。

でも、好きな季節はすぐに「冬」と答えました。

 

Bさんにくるまで、ほかの人は「春」か「秋」とこたえていたのに・・

なのに敢えて他の人とは違う「冬」と答えたのです。

 

Bさん、自分の番になるまで、私が投げかけた質問をよ~く考えていたんですね。

そしてしっかり自分の考えを話すことができました。

 

理由を聞くと、言葉になるまで時間はかかりましたが、小さな声で、でもにっこりしながら

「だってね、スケートができるでしょ」と言いました。

 

この時、私は思わず涙が出そうになりました。

 

Bさんは長野の生まれなのです。

子どものころから冬はスケートをして遊んでいたのでしょう。

楽しい思い出なのでしょうね。


 

「春夏秋冬、好きな季節はいつですか?」

「どうしてその季節が好きなんですか?」


この質問には魔法の力があるのかもしれませんね。