終戦後、昭和20年代の歌謡曲はどのような傾向にあったのでしょうか。
ヒット曲を調べてみると道筋が見えてきます。
終戦後しばらくの間は「戦争、焼け跡、復員、捕虜」といったキーワードの曲が流行しました。
まずはそれらの歌から始めましょう。
- リンゴの唄
サトウハチロー作詞 万城目正作曲 並木路子 昭和20年
戦後を代表する1曲です。
敗戦、食糧難など辛い毎日でしたが、この曲が人々の心を慰めたことはあまりにも有名ですね。
- かえり船
清水みのる作詞 倉若春生作曲 田畑義男 昭和21年
終戦になり、外地で戦っていた兵隊さんが、続々と復員してきました。
この曲は復員してくる兵隊さんのことを歌っています。
ラジオでは「尋ね人」「復員だより」「引揚者の時間」という番組があり、戦争の混乱で行方不明になった人や、復員兵の情報を流しました。
復員だより←クリックすると復員だよりを聞くことができます
- 異国の丘
増田幸治作詞 吉田正作曲 竹山逸郎 昭和23年
シベリア抑留兵だった増田幸治が作詞をし、抑留兵の間で歌われていました。
2番に「泣いて笑ろうて歌って耐えりゃ」という歌詞があります。
辛い時も歌が慰めになったことがよくわかりますね。
シベリア抑留兵だったかたのお話を聞いたことがありますが、寝るときは雑魚寝で、夜中にトイレに起きて戻ってくると、自分の寝ていた場所が無くなっているくらい、ぎゅう詰めで寝ていたそうです。
この後は、戦後を代表する3人の歌手のヒット曲を歌っていきます。
一人目は岡晴夫です。
- 東京の花売り娘
佐々詩生作詞 上原げんと作曲 岡晴夫 昭和21年
岡晴夫は大正5年に木更津で生まれました。
昭和13年、キングレコード専属になり、『上海の花売り娘』がヒットします。
この曲は花売り娘シリーズの第4弾。
「広東」や「南京」の花売り娘もあったそうです。
- 啼くな小鳩よ
高橋鞠太郎作詞 飯田三郎作曲 岡晴夫 昭和22年
高齢者の皆さんが大好きな曲です。
岡晴夫は「オカッパル」という愛称で呼ばれていたそうです。
明るくカラッとした歌声が大衆に受けたのでしょうか。
- 憧れのハワイ航路
石本美由紀作詞 江口夜詩作曲 岡晴夫 昭和23年
この歌も大概の方は知っていて、よく歌えます。
戦争が終わって3年しかたっていないのに、「憧れのハワイ」というのは、いったいどういうことなのかな、と考えてしまうのは私だけでしょうか。
それはともかく、セッションの雰囲気を明るくするにはもってこいの曲ですね。
しゃもじと鳴子とサウンドシェイプを使って合奏(4回2回1回)をしましょう
楽器活動については会員登録の上「音楽療法のヒント!」をご覧ください。
戦後を代表する歌手2人目は美空ひばりです。
- 悲しき口笛
藤浦洸作詞 万城目正作曲 美空ひばり 昭和24年
美空ひばりは昭和12年、横浜で生まれました。
12歳でデビューしたひばりの最初のヒット曲です。
昭和20年、まだ8歳のひばりは、歌唱力があり、公民館や銭湯で歌っていました。
9歳の時、のど自慢に出演しましたが、あえなく落選。
理由は「子どもらしくない」ということだったそうです。
並外れた歌唱力の持ち主だったのですね。
- 東京キッド
藤浦洸作詞 万城目正作曲 美空ひばり 昭和25年
13歳だったひばりが主演した映画「東京キッド」の主題歌。
チューインガムやチョコレートといった当時としては珍しくハイカラなものが出てきます。
- 越後獅子の歌
西條八十作詞 万城目正作曲 美空ひばり 昭和26年
3曲中では、高齢者の方が一番歌える歌です。
もの悲しいメロディと、可哀想な境遇の主人公に同情して涙を流す方もいます。
3人目は春日八郎です。
- お富さん
山崎正作詞 渡久地政信作曲 春日八郎 昭和29年
春日八郎は大正13年、福島県出身です。
東洋音楽学校を卒業し、昭和23年、キングレコードの専属歌手になります。
しかし、なかなかヒット曲に恵まれず、昭和27年に『赤いランプの終列車』がヒットします。
『お富さん』は歌舞伎の演目「お富与三郎」が題材となっています。
- 別れの一本杉
高野公男作詞 船村徹作曲 春日八郎 昭和30年
昭和30年のヒット曲ですが、『赤いランプの終列車』よりは馴染みがあります。
お地蔵さんのある大きな1本杉。
懐かしい風景が目に浮かんでくる方も多いことでしょう。
まだ時間があるようなら、下記の中から選んで歌うのもいいかもしれません。
どの歌もよく歌える歌です。
*昭和20年代のヒット曲*
昭和20年 リンゴの唄
昭和21年 かえり船、東京の花売り娘
昭和22年 啼くな小鳩よ、雨のオランダ坂
昭和23年 憧れのハワイ航路、異国の丘、湯の町エレジー
昭和24年 青い山脈、悲しき口笛、銀座カンカン娘
昭和25年 東京キッド、桑港のチャイナタウン
昭和26年 越後獅子の歌、高原の駅よさようなら
昭和27年 芸者ワルツ、リンゴ追分
昭和28年 街のサンドイッチマン
昭和29年 お富さん、高原列車は行く